ブログ作成の経緯

紫藤はるか
紫藤はるか

 ワードプレス?

 札幌の片隅、小汚い呑み屋で僕は来栖くるすメルにそう訊き返した。

来栖める
来栖める

 そう、WordPress。簡単に説明すると、ブログみたいなやつなんだけど 

 来栖はそう云ってビールジョッキを傾ける。「ほらよく中身のないスカスカのアフィリエイトのサイトでよく使われてるやつ」
 身も蓋もない云い方に苦笑いをしながら僕は「いや、WordPress自体は知ってるけど、それがどうした?」と訊ねる。
「いやあ、次の仕事でね、ちょっとWordPress触らなきゃならなくなってさ。それでテストも兼ねて自分でも立ち上げてみようと思ったんだけれど」来栖は空になったジョッキをフラフラさせ「いかんせん、私には特に書きたいことがそんなにないんだよ」
 

 この男筆者も彼も男だが、気がふれているので美少女アイコンに見えている。1 とは大学生の頃からの付き合いになるが、たしかにウェブ上で何かを表現しているところを見たことがない。ついでに云うと、何の仕事をしているのかもよくわからない。
「僕だってそんなに書くことないよ」
「またまた」と来栖は笑う。「きみ、ホームページとかよく作ってたじゃない。あとブログも」
「うっ」たしかにこの男の云うように、僕はいくつかのホームページとブログを運営していた人間だ雑記サイト、邦画のホラーレビューサイト、ダメミス(ダメなミステリー)と妹もののエロライトノベルのレビューをするブログを持っているが、2024年現在すべて更新が途絶えている。2 。過去形なのがポイントである。「もう十年くらい更新してないし……」
「それにさ、Twitterももう終末っぽいし」
Twitterなぁ我々は既に新しい概念を受け入れられない年齢になりつつあるため、未だにX(旧Twitter)のことを「Twitter」と呼び続けている。3 」来栖の云う通り、Twitterはインプレ稼ぎのクソアカウントあふれるアポカリプスのような体をなしている。この男は以前、Twitterのアカウントを作ったはいいがほとんど運用していなかったはずだ。なるほど、本当に書きたいことがないのだろう。「ゾンビ映画みたいな状態だから、いつなくなるか……」
「だからさ、セーフハウス的な? 今のうちに居住地作っとくと便利じゃない?」そういいながら来栖はスマートフォンを操作し、こちらに寄越してくる。「Mastodonなりmisskeyなり、別のSNSに移るにしても、ActivityPubに対応してるなら将来性もあるし」
 画面にはいくつものサーバーが線で繋がったような画像が表示されていた。それを見てもどういう理屈で、そのエロサイトみたいな名前のものところがどっこい、筆者が移住先にしようとしていたBlueskyに使用されているのはActivityPubではなく、別のプロトコルのため、いまのところ連携は取れないのである。4 が役に立つのかわからないが、知識がない僕には。
「内容に関してはなんでもいいよ。映画とか本のレビューでもいいし、ポエムを流してもARG代替現実ゲーム(Alternate Reality Game)のこと。インターネットやその他媒体と現実を結びつけ、真相に迫っていったりストーリーを追ったりするやつ。そんなこと個人でできるかバカ!5 とかしてもいいし。とりあえずコンテンツがある程度揃えばいいんだ」レビューに関しては現在も時々行っているので出来ないことではない。ポエム……はおいておくとして、ARGってなんだっけ? 聞き覚えはある気がする。「犯罪にさえ使わなければね」
「犯罪って、そんなだいそれたことできないぞ」ぼくら二人程度の個人運営のブログでできるような悪いこと……呪いの代行とかだろうか?
 来栖は「犯罪はするなって云ったでしょ」と苦笑いする。「ま、考えておいてよ。きみがやらないならやらないで、仕方なく私だけでやってみるからさ」

 これが去年の末の話である。多分に脚色は混ざっているが、おおよそ交わされた会話はこのような感じだった。そしてそれをすっかり忘れた頃の今年の四月中頃。彼からメッセージが送られてきた。

『5月から開設するから』
 はじめは何の話かわからなかった。Arkの鯖かなんか立てるのかと思った。『ブログの件、忘れてた?』
 忘却の彼方に追いやってた話が突如背後に現れた気分だ。「完全に忘れていた」僕は素直に認めた。半年近く前の話は遠い過去の話だ。でも『ニンテンドー3DS(2011)ってわりと最近のハードだよね?』という気もする。相対性理論ってとてもロマンチックで、とても切ないものだね……。「というかやるって決めたわけじゃ」
『もうサーバ借りて、きみのアカウントも作っといたよ』どうやら準備万端らしい。ログイン用のアカウント名とパスワード、そしてサイトのリンクが送られてきた。これで入れということらしい。
 既にプロフィールも記入されていた。どうやらこのブログは研究所という体裁をもって運営されるようだ。いつの間にか副所長に就任していた。二人しかいないので当然か。
「それにしても、このブログ……」僕は管理ページを眺めながら、どこかしらに既視感を感じていた。Non-existent……存在しない……非存在……Nonentity……。あっ……。
『ブログタイトルだけど、考えるのが面倒だったからきみの昔のサイトNonentity Ali…とかそういう名前だった気がする。ついでにいうとブログの方も未確認ア…とかそういう名前だった。6の名前をちょっと借りたよ』
「黒歴史を!! 掘り返すな!!!!」

 実際にこういう会話があったかは想像に任せるほかないが、このような経緯でこのブログは成立した次第である。


注釈

  1. 筆者も彼も男だが、気がふれているので美少女アイコンに見えている。 ↩︎
  2. 雑記サイト、邦画のホラーレビューサイト、ダメミス(ダメなミステリー)と妹もののエロライトノベルのレビューをするブログを持っているが、2024年現在すべて更新が途絶えている。 ↩︎
  3. 我々は既に新しい概念を受け入れられない年齢になりつつあるため、未だにX(旧Twitter)のことを「Twitter」と呼び続けている。 ↩︎
  4. ところがどっこい、筆者が移住先にしようとしていたBlueskyに使用されているのはActivityPubではなく、別のプロトコルのため、いまのところ連携は取れないのである。 ↩︎
  5. 代替現実ゲーム(Alternate Reality Game)のこと。インターネットやその他媒体と現実を結びつけ、真相に迫っていったりストーリーを追ったりするやつ。そんなこと個人でできるかバカ! ↩︎
  6. Nonentity Ali…とかそういう名前だった気がする。ついでにいうとブログの方も未確認ア…とかそういう名前だった。 ↩︎

この記事を書いた人

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非実在研究所副所長(したっぱ)、ミステリとかギャルゲが好き

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